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ピーター・ジャクソンのドキュメンタリー "They shall not grow old" がすごかった

投稿日:2018-11-30 更新日:

 

 

今までにないドキュメンタリー

すごいドキュメンタリー映画を見てしまいました。

「ロードオブザリング」や「ホビット」の監督で知られる、ピーター・ジャクソンによるドキュメンタリー映画 「The Shall not grow old」です。

ロンドンにある帝国戦争博物館の第一次世界大戦のアーカイブから、退役軍人約200人の600時間余りのインタビュー、そして100時間余りの現地で撮影されたオリジナルビデオを元に、戦後100周年を記念してつくられたものです。

こちらのドキュメンタリー、2018年の10月BFI ロンドンフィルムフェスティバルのプレゼンテーションではウィリアム王子が出席し、いくつかの映画館で上映され、イギリス内の高校にも同じ日に配られ、さらに11月11日の戦没者記念日には英BBCでテレビ放送されました。

(戦没者記念日についてはこちらをご覧ください。)

イギリスにとってはとても意味のある映画であるようです。

 

 

どんな内容なのか

この戦争が兵士にとって一体どんなものだったかということに焦点が当てられています。教科書に出てくるような歴史や政治的背景の説明もストーリー性もありません。映像に出てくる個人の名前や場所も省かれています。

映像のほとんどが今回初めて公開されたもので、映像に実際に戦場で戦った元兵士のインタビュー音声が重ねられています。

また当時の映像はサイレントなので、映像の中で話をしている人たちの声や音は、口の動きに合わせてアダプトされ、武器を扱う音や足音、戦車が動く音などを加えられているので、映像がより一層映画の中の人たちが身近に感じることができるんですね。

そして何よりこのドキュメンタリーで凄いところは、最新のテクノロジーを使って、荒いモノクロの映像をカラーにして画質を修正しているところです。昔の画像とはとても思えません。

フレーム数10-18で撮られたものを24フレーム(一秒間ごとのフレーム数)へ画像処理されたことにより、より現在見る映像に限りなく近いものになっています。(現在映画は24フレームが主流です)。

写っている兵士の顔や表情が生き生きと蘇っていて、まるでそこにいるかのよう。

兵士同士の友情、戦場へ行きたくて歳を偽ったり、死と隣合わせの日々の中にユーモアや笑いがごく当たりまえの生活と同じように存在する。敵国の兵士とラグビーをしたり、祖国について語り合ったり。。。

退役軍人のナレーションも奇をてらったものもなく、当たり障りないコメントではありません。正直なありのままの感想。

「プラムとアップルジャムばっかで、なんでストロベリージャムがないのかって思ったよ。」

「最初キャンプしているみたいで楽しかったよ。それにちょっとスリルがある感じで。」

なんてコメントは日本ではおそらくご法度な感じに聞こえますが、実際には若者たちが戦場へ行くことは、そんな感覚だったのかもしれませんね。

第一次世界大戦は映像に収められた最初の戦争だそうなのですが、これらの映像は当時街の映画館などで上映され、戦場で何が起きているのかを知る貴重な手がかりだったようです。もしかしたら戦場に行った家族が映るかもしれない、という気持ちもあったのでしょう。

戦地へ赴くところから終戦までの、兵士たちの生々しい正直な語りと映像が見るものの心に焼き付きます。

 

 

なぜピーター・ジャクソンなのか

そもそも第一次世界大戦に興味を持ってきたジャクソンに、帝国戦争博物館からドキュメンタリーの話があったとのこと。

ジャクソンは以前にも戦争に関するドキュメンタリーを製作していますし、個人的にもユニフォームや戦争グッズをコレクションしたり、当時の戦闘機のレプリカを作る趣味を持っています。(彼のコレクションは、映像をカラーリングするにあたりとても参考になったようです。)

またこの映画製作の裏側を収めたドキュメンタリー番組(What do artist do all day?)では、ピーター・ジャクソンが手がけた「ロードオブザリング」の原作者トールキンが実際に大戦で将校であり、親友を戦場で無くした経験がストーリーに中に反映されているとするジャクソンのコメントが印象的でした。

そういった意味でこのドキュメンタリーを監督するのは、第一次世界大戦に思い入れが半端ない彼以外にはいないのではないでしょうか。

映画は実際に世界大戦で戦った、ピーター・ジャクソンの父方の祖父であるウィリアム・ジャクソン氏に捧げられています。お父さんからおじいさんの話を聞いていたそうで、このドキュメンタリーを作るにあたって、祖父が戦争でどんな体験をしたかよく理解できたと語っています。

ちなみにピーター・ジャクソンはこの映画製作による報酬はもらってません。ジャクソンのクルーは映画に使用されなかったものも含めて、約100時間の画像全てを無償で修復したそうです。

 

 

評価は?

まだ一般公開されてなく、現在のところDVDも発売開始されていませんので、レビュー数は少ないですが、今のところ、修復技術、引き込まれるような空気感、またその戦争描写により批評家に高い評価を得ました。

評価 

Rotten Tomatoes 98%  8.9/10

Metacritic 88/100

IMDb   8.8/10

Independent 5/5

The Guardian 5/5

 

いくつかコメントを紹介しますと。。

"Jackson has attempted to take ageing footage and make it young again – to bring history, and those who lived it, into the present. It is an endeavour in which he has succeeded superbly.   -The Guardian"

ジャクソンは古い映像を再び若返らせること、そこに存在した人たちの歴史を現代に蘇らせる挑戦をした。そしてその試みは素晴らしい成功を収めた -  ガーディアン紙

 

"Jackson’s storytelling skill matches his technical wizardry. - The Independent"

ジャクソンの物語りの技と彼の技術の魔法との見事なマッチングだ。- インディペンデント紙

 

"the film’s faces that stick longest in the mind.  - Variety"

映画に出てくる顔が心に焼きついて離れない  - バライアティーマガジン

 

これからどんな評価になっていくでしょうか。

 

 

感想

11月11日を何日か過ぎたある日の夕方に夫が見ていた、録画済みの映画。最初な何気なく一緒に見ていたのですが、だんだんと引き込まれていって、気がつくとテレビの前に釘付けに。。

目が離せないまま、あっという間に1時間半が過ぎてしまいました。

これは一体なんなのかな?ということで調べてていくうちに、さらに引き込まれてしまいました。

今までの歴史映画やドキュメンタリーとは全然違う。大げさにドラマチックに作り変えられることなく、ただ、事実としてそこにある記録を最高な方法で組み合わせて、私たちの前に現れた!という印象です。

私たちには想像できないような戦争下の状況で、勇敢に家族や祖国のために命をかけて戦う兵士たち。戦争を体験をしたことのない私たちにとって、それは想像を絶する、映画や歴史の中だけの向こう側の世界へ、ぐっと首根っこを掴んで連れて行かれる、そんな感覚。

通常、昔の映像を見るときは、少し動きが早めだったりモノクロでよく見えなくて、いかにも昔のこと、と言う感じがするんですが、このドキュメンタリーを見ていると、まるで最近撮った映画のようなきれいな画像で、100年前のものとは思えないほど、人々が身近に感じます。

まさにフェイスブックやインスタグラムでライブをしているような感覚。

ちょっと見ると本当に電車の中でスマホ見てるお兄さんとかと何ら変わりないじゃありませんか!

まさに戦争映画を見ているようなクオリティでありながら、何もかも100%完全に本物。本当に実際にそこにいてそこで戦った人たちが、映像の中に生き生きとよみがえって私たちの生活と同じような目線で見ることができるのは、本当に衝撃的です。とにかくずっと画像から目が離せません。

前線で戦いながらも笑顔でカメラを見つめる彼らの表情が印象的です。

ただそこにいた人たちのありのままの姿、思いがそこにあります。

改めて戦争に関して考える機会となりました。

 

ちなみに死んだ人たちや少し正直すぎる映像やも入っていてショッキングな部分も多くありますので、ご注意くださいね。

日本で公開となるかは不明です。イギリスではDVDがプレオーダーで販売受付中です。ご興味ある方はどうぞ。

 

 

最後にピーター・ジャクソンがドキュメンタリーの中で言っていた言葉です。

“The people that fought the First World War were exactly the same as us. I’m just trying to get that sense of how normal people would react to this, because they were normal people, they were you and me everybody watching this. They were just normal people. “  - “What do artist do all day?”

「第一次世界大戦で戦った人たちはまさに私たちと同じ人間なんです。私はただごく普通の人々がどんな風にこれに反応したのかを感じ取りたいのです。なぜなら彼らは普通の人で、彼らはこれを見ているあなたや私と同じ人間だから。彼らはただ普通の人たちだったんです。」

 

 

参考

https://en.wikipedia.org/wiki/They_Shall_Not_Grow_Old

“They shall not Grow Old “  2018 WingNut Films

“What Do Artists Do All Day? - Peter Jackson ” BBC 11th Nov 2018

https://www.imdb.com/title/tt7905466/

https://www.theguardian.com/film/2018/nov/11/they-shall-not-grow-old-peter-jackson-review-first-world-war-footage

https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/films/reviews/they-shall-not-grow-old-peter-jackson-review-first-world-war-ww1-lord-of-the-rings-hobbit-a8586401.html

https://www.rottentomatoes.com/m/they_shall_not_grow_old/

https://variety.com/2018/film/reviews/they-shall-not-grow-old-review-peter-jackson-1202981266/

https://www.metacritic.com/movie/they-shall-not-grow-old

ワードプレス336

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