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「チェリー イングラム - 日本の桜を救った日本人」英訳本 を読んでみた

投稿日:2019-05-10 更新日:

cherry

イギリスの桜

ロンドンに住むようになってしばらくしてから気がついたことの一つが、中心地でさえも緑が多いこと。沿道には木が植えられていて、古い通りには3、4階建てのビルにも負けないくらい高さの木がそびえ立ち、緑のある公園や広場はどこでも大体徒歩圏内に存在します。住宅街に植えられた木々も本当に美しく、住人は思い思いの植物を植えていて家と共に見せることを意識しているようです。春夏は圧巻の景観となります。とにかく歩行者はブラブラと歩くだけで存分に自然を満喫することができるのです。

そしてそれに加え桜が美しいです。日本のように一箇所にたくさん植えてあるところは少ないですが、日本で典型的なソメイヨシノや八重桜などとはまた違った種類のものも多いので、しばらく桜だとは意識していませんでした。桜というと海外ではちょっとセンチメンタルな気分にならなくもないのですが、そんな気分も忘れさせてくれるくらいイギリスのレンガや白い壁を背景にした桜は、日本で見るものとはまた違った美しさを放っています。

 

チェリー・イングラムの本との出会い

イギリス人の義理の母にとって日本は桜の美しい国。桜のモチーフのものをプレゼントをするととても喜んでくれるのですが、ある日、その義理の母よりある本をもらいました。「チェリー・イングラム - 日本の桜を救ったイギリス人」阿部菜穂子著。 そしてこの本に関する英紙の大きな新聞の切り抜きを見せてくれました。イングラムという1人のイギリス人が桜を愛し救った。確かにイギリスには桜があるけれど、救った?日本の桜はいつも咲いているのに。と不思議に思いました。

日本に住んでいた時には、桜はあまりにも当たり前すぎるくらいに身近なものでした。春には日本中に咲き誇り、桜に関する商品が並び、テレビや雑誌でも桜特集を組み、桜前線予報を報じます。入学式や入社式のシンボルは桜であり、職場でもお花見宴会はすごい盛り上がり(場所取りが大変!)。試験に受かると「サクラサク」。落ちると「サクラチル」なんてありましたね。もう古いでしょうか 笑。

でも逆に当たり前すぎて全く桜のことを知らなかった。ということにさえ気づいていませんでした。この本を読むまでは。

 

イギリスの庭へのこだわり

イギリス中に広大な敷地を持つ屋敷があり、少しロンドンから郊外へ車でドライブするだけで、そういった建物が場所や規模を問わずボンボン出てきます。

裕福層や大きな地主は莫大な財産を使い自分の敷地に美しい景観を作り上げてきました。これがほぼそのままの状態で残っているのですね。階級制度があったからこそ出来たものなのでしょう。

イングラムは、Illustrated London News創設者の孫として非常に裕福な家に生まれました

小さい頃はロンドンの高級住宅街で自然史博物館から2分ほどのところに住んでいて博物館に夢中になったり、いわゆる上流階級では典型的なハンティングや、Epsom, Henley, Cowes, Cricketsなど競馬やボートレース鑑賞などのイベントを楽しんでいたようです。そしてケントの邸宅に住み、庭園を作りました。

イングリッシュガーデンは日本でも人気ですがイギリスでは庭を作ることは上流階級の嗜みの一つ。大きな屋敷には必ず美しい庭があります。どんな美しい庭を作るかということは非常に大事な仕事なのだと思います。そしてその庭の景観は自然に見えながらも実は計算されたものなのです。

ブログで以前書いた スタワヘッドの庭もまさにそれを体現したものと思います。

ブログ 美しいスタワヘッドをつくってしまったホア家とは

その昔彼らはコミュニティにて木や草花の情報交換をしたり、珍しい植物を自慢し合うなんてことをしていたそうです。現在でも上流階級雑誌にはガーデニング特集として、マダムがウェリーとガーデニンググッズを持ち、素敵に庭仕事をする写真が掲載されてたりしています。そんな環境でイングラムは過ごしていたのですね。

 

イングラムと桜

イングラムは1902年、21歳の時に友達と日本へ初めての旅行をすることから、その後の日本との関係が始まります。日本に魅せられたイングラムは、その後1907年にも妻フローレンスと訪問

そしてケントの邸宅に桜の木を植えようと決意し、独学で桜の勉強を始めます。日本の桜のスペシャリストの助けを得ながら、イギリスに桜を持ち込み自ら新しい品種も改良しました。

でも世界大戦最中の激動の時代とともに、桜の危機が訪れます。戦争と桜がそれほど深く関わっていたこと、そしてソメイヨシノに執着したこと、多くの桜が見捨てられたことなど、現代の私たちには予想だにできないような出来事が背景にあったことに驚きます。

そして絶滅寸前の桜を救おうとしたイングラムの熱意がどれほどであったかは、ぜひ本を読んで頂ければと思います。

 

桜の歴史

この本はイングラムの功績を見ることができると同時に、どうやって桜に危機が訪れたのかを表現するにはとても重要なファクターである時代背景の歴史の記述が非常に多い印象でした。

平安時代に初めてお花見が催されてから江戸時代に至るまで、公家武家屋敷に競うように桜が植えられていったとのことです。残念ながら一部を残してほとんどが失われてしましたが、さぞかし美しい光景だったことでしょう。

そしてイングラムの義理の娘となるダフネをはじめとする日本による強制収用所での話も衝撃的です。第二次世界大戦時イギリスはもっとも多くの人が捕虜となり、劣悪な環境の中捕虜の1/4が亡くなっています。

また捕虜問題研究家の浅利政俊さんのお話や、桜を通しての戦後の日本の平和活動など、戦争との関わりを知ることが出来ます。

東京の荒川沿いの桜の歴史も非常に興味深いです。桜守りという桜のスペシャリストがいることも初めて知りました。

 

チェリー・イングラムを読んだ まとめ

数年前に今の家に引っ越しをしてから、玄関口に桜を植えたいとずっと考えていました。昨年大きな園芸店ウィズリーに見に行きましたが、たくさん種がありすぎて選べず延期に。。

この本を読み進めながら、桜には花の色や形だけではなく咲く時期、開花の期間、枝の伸び方など、実に様々な種類があることを知りました。ぜひこれぞと思う桜を選べたらいいなと思っています。

歴史ごとに役割が変遷し、激動の時代にも日本人とともに歩んできた桜。桜がここまで日本の歴史や文化を体現しているとは驚きでした。これほどまでに時代に翻弄された植物は他にはないのではないでしょうか。

この本は日本人として桜の歴史を知る良い機会を与えてくれました。また毎年色々な場所で桜を見るのが楽しみです。

そしてイギリスにも素晴らしい桜がたくさんあることを大変嬉しく思います。桜の力は計り知れません。たとえ桜がどこから来たのか、どんな運命を歩んできたのかを知らなくとも、満開に咲く桜を見たら誰でもその美しく可憐な姿に心を揺さぶられます。満開の歓喜、散る時の侘しさ。

楽しくもあり悲しくもあり、空間を共有した時に私たちそれぞれの感情がふっと動く感覚は、桜ならでは。そしてそれが桜の不思議な魅力でもあります。だからこそ、桜はいつの時代にも人々と共にあったのでしょう。

桜が世界中に美しく根を張り、人々にささやかにでも平和な思いと喜びを感じてもらえたならば、日本人としてこんなに嬉しいことはありませんね^^

 

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